《MUMEI》

 




「遊佐さん」











後ろからあらわれたのは夜でもわかるあの派手な金髪。いきなりの登場に少しだけ肩が跳ねた。











「話し合いはもう終わったんですか?」

「あぁ、」













簡単な返事をして洗っている最中のあたしの手元を背後から覗く。会話に間があいたので気になっていたことを恐る恐る聞いてみることにした…














「何処か、出掛けるんですか…?」

「……………………………」








聞くと遊佐さんの眉間に皺が寄り、厳しい顔になる。

やっぱり深入りするのはマズかったかと後から後悔したが、遊佐さんはゆっくり口を開き、「近々、一派総出で御殿に足を運ぶ」そう答えた。











「一派総出……てことは紅組以外の一派も、ってことですか?」

「あぁ、四方八方からやって来る。もし欠席や遅刻なんてことすりゃ面子が立たねェ。だから前もって話し合うんだ」

「集まって何をするんです?」

「ま、殿下に軽く挨拶と報告書の提出だ」

「報告書?」

「ちゃんと業務を果たしてるか、決められた区域の間の揉め事は全部俺達一派が治めなきゃならねぇからそう言ったもんをひっくるめて書類として提出しなきゃなんねーんだよ」

「大変、ですね…」












とゆうかこうもアッサリと詳しく内情を話してくれたことに驚いた。

自分は他所者だからと口を開いてくれないと思ってたのに……








それが顔に出ていたみたいで遊佐さんはあたしの顔をジトッと見ながら「なんだその面は」と、指摘してきた。










「…………いや、遊佐さんがあたしの質問にちゃんと返してくれたから」

「聞いてきたことに対して返答しない奴いるのか?」

「なんか…意外だったんで…」










すると眉間に皺を寄せ出す遊佐、











「意外っつーのはなんだ?お前には俺が失礼な人間に見えんのかァ?」

「ち、ちちち違いますって!落ち着いて下さい!殴らないでッ」














喧嘩腰の遊佐に慌てて守備体勢に入り落ち着かせようと声をあげる。そんな星夜を見下ろしため息をはきながら、








「別に知られちゃならねーような重大なもんでもねぇし、聞かれたら答えるぐらいはする」

「あ、ありがとうございます」

「ただし、」

「!」













落ち着いたのもつかの間、釘を刺すように見据え言葉を加える。

何なんだろうかと内心ドキドキと脈打つ















「お前は此処に居ようと俺達一派とは無関係ってのはわかるな?」

「……………はい、」

「俺はお前には帰る場所が無いことは信じてる。が、それ以外は信用してねぇ」

「………………………」












 

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