《MUMEI》

                  


「…」

嫌い…?

宇理は俺に嫌われてると

思ってんのか…?


黙って考えていると


「お兄ちゃん…?」


宇理を見ると不安そうな表情に戻っていた。


「嫌いじゃねぇよ」


思ってる事を言おうとした瞬間――



ガラッ


「宇理!大丈夫か!?」

いきなり藤崎が入って来た。

藤崎は俺を見た瞬間驚いた表情になった。


「先輩…なんでここに…?」


藤崎が俺に聞いてきた。

その質問おかしくないか…?


「…兄が妹の様子を見に来たらおかしいか?」


「宇理が可哀想ッスね」

「あ?」


藤崎の言葉に苛立った。


「今まで宇理を傷付けてきたくせに、
今さら気を持たせる様な事すんなよ!!」


藤崎は生意気に怒鳴ってきやがった。

殴りそうになったが

宇理の前では出来ない。


「ハッ…俺がいつ宇理を傷付けたんだよ。兄妹だぞ?こんな普通の事で気を持たれたら問題だろ」


自分で言ってて虚しくなった。

嫌いだった『兄妹』って言葉を。

だがそれが現実…。

何を言おうと兄妹の関係は変わらない。


だから俺はわざと鼻で笑って涼しい表情で言った。



「そうだよ圭汰。私とお兄ちゃんは
兄妹だよ?ありえないよ」


胸が

ズキッとした。

まさか宇理に『ありえない』と

笑顔で言われた事に。




「宇理…?」

藤崎は驚いた表情で宇理を見ていた。


宇理は笑いながら言った。

「私はもう大丈夫だから。先にお兄ちゃん帰っててくれる?」

「…あぁ」


宇理の態度がさっきと変わった気がした。

気のせいか…?


宇理を見た後、保健室を出た。
                  

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