《MUMEI》

送るぜ、翔太

…チャリ…あるから…

明日にでも取りに来いよ

…ごちそうさまでした

頭を下げ、姉ちゃんを置いて、チャリを走らせたんだ……

……送られたら…姉弟って…バレるもんな…

……気持ちの整理も…ついてないし…

土手沿いの道を走ってるときだった

うわぁっ!

スレスレを、車が通過したんだ!

服が、車に擦れた…

転んだ俺の前に、車から降りて来た男が

…あんな臭マン、要らねーよ…
ガキが…舐めやがって

あの、高級車の男だった

腹に蹴りを食らった

……息が詰まる…

頑張れよ、チャリンコ少年……せいぜい臭マンでも舐めてろ…

そう言った男が、俺のチャリンコを、土手下に、投げ捨てたんだ

………知ってるか?
何人もの男のを、舐めてんだぜ…優香…
…キスしたり、乳揉ませたりよ…
……少年…お前はしてもらったか?…
…遊ばれてんだよ…お前もな…彼氏気取りしやがって……ペッ…

俺に唾を吐き掛け、男は立ち去って行ったんだ…

………チャリ…取りに行かなくちゃ…

茂みをかきわけ、チャリを引っ張り上げた

蚊に、たくさん食われた…
…チェーン…外れてらぁ………

痛っ…くそ…はまらないや……

…くそっ…………くそっ……

涙が止まらなかった…

………悔しくて…

結局、チェーンははまらなかったんだ…

チャリを押して帰った…

……なにやってんだろ………俺…

………帰宅すると、姉ちゃん、リビングで待ってたみたいで

…どこ、言ってたの…
翔太、怪我してるじゃない!…

…姉ちゃんに言われて気付いた

膝、擦りむいてたみたいだった…

手も、油だらけで…

……何も話さず、黙って、シャワーを浴びたんだ…

………真水のシャワー

…油……落ちないや…
………くそっ…

……叫びたかった
暴れたくてしかたなかった………

でも……

………シャワーから出ると、姉ちゃんが待ってたんだけど…
顔も見ず、自分の部屋に行ったんだ…

…身体も拭かず、全裸のまま、ベットに入った…

………気持ちが落ち着かない…
…何だろう…この、大きな空洞みたいな気持ちは…

…なんか………疲れたな……寝よう…もう…考えたくもないょ…

…手を伸ばし、リモコンでエアコンを掛けたんだ…

……どんなに好きでも
姉ちゃんだもんな…
………写メ…出回ってるんだ…
…学校…行きにくいよな…姉ちゃん…
……………俺…何も出来ないもんな…
…ガキだもんな…

………何も…出来ない……無力な…ガキか……

…惨めでしかたなかった……

何が惨めなのかな…

……それすらわからなかった…

そうだ…寝るんだった……考えたくない…
………寝たら…楽になるよな…
…考えなくて、すむもんな…

でも、頭の中で、グルグル、グルグル…何度も考えてた…

ひとつだけ、ハッキリしてる事は
俺は姉ちゃんを好きだって事だけだった…
………でも………結ばれない…関係…
…それも、ハッキリしてることなんだよな…きっと………

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