《MUMEI》 久しぶりの親子水入らずで、はしゃぎすぎたようでタクシーの中でぐっすり眠ってしまった。 背中に乗せると重くて、大きくなったなと実感した。 帰宅すると電気が点いていて、まだ彼等が家に居ることに驚く。 恋人は日帰りだと聞いていたが……。 彼の部屋の僅かに開いた扉の隙間から、音がした。 「――――――――あっ……あっ、やっ!」 聞き間違えであって欲しかった。 食卓テーブルの上で彼の上に覆い被さる男が、例の恋人なのだろうか。 「んん、くちびる頂戴……きもちいい……だいすき、すき……。」 彼を好きにしながら、子供のように甘えている。 懸命に接吻に応えようとする彼が健気で印象的だ。 最初、犯罪と錯覚させるようなシチュエーションだった。 食卓テーブルで料理の中に彼は並ばされて足首に衣服が纏わり付いている。 名前を愛おしみながら呼んでいる姿で、かろうじて和姦だと理解した。 急に、怖くなる。 ここに私は届くのだろうか? 「なな……」 彼を抱きしめる恋人の逞しい腕、恋人に挑発されたような敗北感。 私が踏み込むことが出来ないラインだと、思い知らされる。 その場を立ち去って、一度バーで気持ちを落ち着かせた。 前へ |次へ |
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