《MUMEI》

宇佐美あさぎ。

略してうさぎと呼ばれている。
正直、このあだ名は気に入っていないし遺憾だ。

勝手にそう呼び始めたのは、友人の長楽弧葉。
何故かそのあだ名は周りの人間に浸透して、しっかり定着してしまった。

俺はその事が悔しくて、奴にも何か面白おかしいあだ名をつけてやろうと思い、弧葉の顔立ちからキツネ(弧葉は目が細い)と呼んでみたのだが、普通にからかわれる事も無く、クラスになじんでいった。
こいつとペアみたいな感じのアダ名を自分で考えてしまうとは…

…悔しさ倍増。

で、そんな事を回想しながら暇を潰しているホームルーム。

担任から配られた書類を、皆、気だるそうに目を通しもせずに、丸めて鞄の中に投げ入れている。

俺はもう鞄を開けることすら面倒臭かったから、適当に机に突っ込んで帰ろうと思い、プリントをひっつかむ。

一瞬、ちらっと見えた内容に、頭の中を刺激された。

……ここ最近、この学校の生徒だけが狙われて、惨殺される事件が多発している。
昨日の夜、起こった事件で三人目だ。
学校付近の、本屋の曲がり角にある自動販売機の前で、元が人体とは思えないぐらい破壊されて死んでいた、我が校の一年生の女生徒。

犯人の手掛かりは全く掴めておらず、警察の捜査も難航しているらしい。
プリントには、夜遅くなってからの外出は危ないから控えましょう、みたいな事が書いてあった。

教師は、いかに今この学校が危険な状況に晒されているか、などといったことを冷めた生徒に熱弁している。

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