《MUMEI》
周りにいたのは
 ユキナを囲んでいるのは全部で六人。
そのうち二人は受験者のようだ。

 ユウゴはユキナの後ろを狙っているジーパンを履いた男の背中を突いた。
ズシっとした感触が気持ち悪い。
ユウゴが手を引くと、崩れ落ちるように男は倒れた。

 少し離れた場所では、サトシも同じようにドライバーを突き出していたが、見事に外し、逆に襲われてしまっている。
相手は太った中年男。
サトシはすばしっこくその攻撃を避けている。
あれならば放っておいても平気だろうとユウゴはユキナの元へ走った。

「なにやってんだよ?お前」
 背中合わせに立ちながら、ユウゴは怒鳴った。
ユキナは額の汗を拭いながら「うるさいわね」とユウゴを横目で睨む。
「俺たちが相手するのはスーツ軍団だけで十分だっての」
「そんなの、わかってるけど。なんか、成り行きでこうなったんだからしょうがないでしょ!」
「成り行き?」
「そう。わっ…!」
ユキナ目掛けて一人の男が殴り掛かってきた。
ユキナはそれを間一髪かわし、スタンガンを体にあてる。
しかし、男は一瞬動きを止めただけで気絶はしない。
ユキナは体勢を崩して、そのまま尻餅をついてしまった。
男は不気味に笑いながら、ユキナを振り向き、そして倒れた。
「……え」
「早く立てよ」
目を丸くするユキナを、ユウゴはドライバーを構えたまま見下ろした。
「あ、うん。ありがとう」
立ち上がりながら、ユキナはユウゴの手に握られたドライバーを見つめる。
「まさか、そんな物で?」
「ドライバーを笑う者はドライバーに泣く」
「……なにそれ」
「いいから、持て」
ユウゴは血に濡れたマイナスドライバーを手渡す。
ユキナはそれを気味悪げに受け取った。

「もうそいつは使えないな。この状況じゃ、充電もできない」
「ユウゴの銃は?」
「弾切れ」
「こんな時に」
「いいから、とりあえずここを切り抜けるぞ」
ユウゴは鞄から少し短めのドライバーを取り出すと構えた。

そして呟いた。

「……なんで?」

少し目を離した隙に、周りには警備隊たちが静かに立ち並んでいたのだった。

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