《MUMEI》

うちの学校の新聞部は、それなりに歴史がある部だ。
全国新聞コンクールなるもので、必ず入賞をはたしている実力校。
なので、部員が四人という少なさでも、廃部になることは決してなく、延々とくだらない学校の行事や日常を綴った紙きれが、全校生徒のために、毎週発行される。
どうせ大半は読まれもせずにゴミ箱行きだろうに。


「部長、目ぇ死んでますよ?大丈夫ですか?」

「大丈夫、いつも死んだ魚の目以下の瞳をして周りに生気の無さをアピールしているじゃないか」

何だとこの野郎。


失礼な事をぬかしやがった弧葉を睨みつけていると、先程俺の身を心配してくれた女子部員、赤西が首をかしげて俺と弧葉の無言の攻防を眺めていた。


「何だ、元気じゃないですか、部長。。はやく残りの原稿仕上げちゃってください」

「…分かってるよ、〆切明日だし…」


ぶつぶつと弧葉に対する文句を吐きながら、ペンを握る。
赤西は、俺が書き上げた原稿の最終チェックをしながら、新聞のレイアウトの図面を紙にメモしていた。


赤西鼠果。背が小さく、全体的にちょこまかとしている所から、ねずみと呼ばれて親しまれている。彼女は新聞部の副部長で、脅威的な速読力とデザインのセンスを持ち合わせていた。
彼女がレイアウトした新聞は読みやすく、かなりレベルが高いものに仕上がっている。
彼女のすごさはそれだけではなく、鞄の中に常に本を忍ばせていて、バスの待ち時間や昼の休憩タイム、更には授業中まで物語に没頭しているという、活字中毒者なのである。変人さん。
しかもそれでいて、勉強はそこそこできる方だという。
俺は常々この女子のスペックの高さ(色々な意味で)は尋常じゃないな、と感じていた。


「部長、また目が飛んでますよ?もうすぐ部活終了時間なんで急いでください」


気が付くと赤西の横顔を見つめてぼうっとしていた俺は、慌てて手元の作業を再開した。

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