《MUMEI》 訳が分からなくなり、その場に蹲る 早く帰りたい、帰って風呂に入りたい、と 酷く汚れてしまった様な気がする自身を耐えきれずに自身を抱きしめていた 「……広也君!やっと見つけた!!」 聞き馴染んだ声が聞こえ、ぼんやりと顔を上げて見れば 其処に、高野の顔 何故、この男が此処に入るのか 解らずに呆然としていると 「何でこんな目に遭ってんの。どうして……」 言葉も程々に抱きしめられていた 「兎に角これ羽織って。歩ける?」 ふわりと肩に掛けられたのは高野が羽織っていたシャツ 小さく頷いてやれば、子供の様に手を引かれ歩き出す 「……アンタ、俺に何があったか、知ってんの?」 知る術のない筈だったそれを態と聞いてみれば 高野は徐に木橋の手の平に何かを押し付けた 「これ、俺の携帯……」 「そ。何度もしつこく鳴るから悪いと思ったけどてえてみた。そしたらその相手が色々と教えてくれてね」 それで探していたのだ、と高野 だが表情にはいつもの穏やかさはなく 見てすぐに解ってしまう程に起こっているのだという事に木橋は気付く その雰囲気にそれ以上何もいう事が出来なくなり 互いに無言のまま、高野宅へとまた戻っていた 「お風呂、入っておいで。ちゃんとゆっくり浸かるんだよ」 着替えはこれ、と自身の服を渡してくる高野へ 木橋はソレを受け取る事はせず、どうしてか唯其処に在るばかりだ 「広也!!」 見るに見兼ねたのか 高野が声を僅かに荒げ木橋の肩を掴む そして浴槽へと連れ込むと、服を剥ぎ木橋の身体を浴槽の中へ 「……君は、言葉が少な過ぎる。こういう時は甘えてもいいのに」 頑なな木橋に苦笑を浮かべる高野 頬へと手を触れさせ、そのまま柔らかく唇を重ねる その優しさは汚れた自身を全て洗い流してくれる様な気がして 湯の温もりと高野の熱に包まれながら 与えられる口付けに、唯々身を委ねていたのだった…… 前へ |次へ |
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