《MUMEI》

いつからだろう、と思う。いつから、自分は空を見ていないんだろう。
もう何年も、外の世界、空気、光に触れていない。
いつもいつも、自分はこの牢獄に繋がれて、灰色の冷たい壁を見つめているか、知らない男の人に体を売っているだけ。
あぁ、また来た。今度の人は若い。汚いおじさんじゃないだけよかったかも。
そんなことを思いながら、少年は鉄格子の向こうに見える、二人の男の顔に目をやった。


「…こいつが例の?」

「はい、今評判の子でございます。すごく綺麗な髪の色をしてるでしょう?顔も美しいし、今人気なんですよ」

「中に入ってよく見てみてもいいか?」

「もちろんです、どうぞ」


牢屋の鍵を開けた若い男は、手錠をした少年の正面に座ると、顔を確かめるように顎を持ち上げ、舐めるように眺め回した。


「確かに、上玉なのかもな。まだガキだけど」

「その幼さがいい、と一部では人気でして。一応年齢は十七歳くらいかと思われますよ」

「…はっ、ショタコン共が。…よし、今日はこいつにするわ」


ありがとうございます、と支配人は男から金を受け取った後、少年の手錠を外し、代わりに首輪をさせ、牢屋の外に引きずりだした。
そのまま、若い男に受け渡された少年は、生気のうしなった瞳で男を見つめ、今日は何時に終わるんだろう、とその事ばかり考えていた。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫