《MUMEI》

ムシャムシャ、クチャクチャ、ムシャムシャ…………



「ん、………どうかしたか」

「いや別にたいしたことじゃないです。気にしないで下さい」

「気になるだろ。たいしたことじゃないなら言ってくれよ」

「ん〜と前に山本さんが資料を何回も読む様子を、牛が草を口に戻して食べるのに似ているって思ったことがあるんですよ。
だから今ムシャムシャと草を食べてるように見えただけです」

「ふ〜何を考えてるんだか」

「それよりも私は今とっても憂鬱なんですよ、少しは気を使って下さいよね」

「昨日のゴキブリの話しだろ、気にするなよ」

「私はとっても傷付いてるんです。ちょっとは優しくして下さい」

「俺はお前らしくて良いと思うんだけど」

「私はいやです。あんなことがあったすぐ後に、布団に入ったら朝まで爆睡だなんて。
怖くて眠れない、とか、掃除機が暴れだして私を吸い込んだらどうしよう、とか、夢の中で………」

「分かった分かった。
ほら、このクッキー美味しいぞ食べてみろ」

「全然分かってない。
早く私の乙女心を理解してくれる人が現れないかな」

「こっちの黒っぽいのはチョコ味だぞ。それにこっちは……グフ、ゲフ、ガハ
乙女はグーでトリプルパンチなんか出さないぞ。いや……やめろ凶器は止めろ……
ぎゃ〜〜〜〜」


この日もいつもと同じように幕を開けるのだった。

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