《MUMEI》

「あれは本当の父親?」
「人の子だよ。あたしは」
 男の単刀直入で遠慮会釈のない問いに返ってきたのは、事実だろうか。
 娘の懐にある独鈷の武器も、天目一個神の手業によるものだろう。彼女も等価交換の負債を抱えているのかもしれない。例えば、魑魅魍魎を彼岸へと渡す者として。
 ここにも逃れられない柵がある。絡みついて、通さず、捕まえて、離さない。
 二鈷、異形の畏怖する者としてともに存在する。
 と、でも語り継がれるならば、碌でもない道行きにも何か意味があるのか。
 何れにせよ、後世に興味はない。

「ところで、どこまでついてくるつもり」
「またまた。頼むよ、事情わかっているくせに」
「あたしには関係ないさ」
「いやいや。俺、何かと重宝だと思うんだけどなぁ」
 山道を二つの影が付かず離れず、連なって下っていく。


 蓮と彼岸、邂逅す。


        終幕

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