《MUMEI》

 






▼▽










―――――ドスドスドスッ







荒々しく廊下を踏みつけるように歩くのは眉間に皺を寄せた遊佐だった。















――――ったく、めんどくせぇめんどくせぇめんどくせぇ!

何で俺がわざわざ動かなかきゃなんねーんだ!決算もまだ終わってねぇし今月の住民登録の見直しもあんのにッッ!ガキの喧嘩の仲介役なんてもん押し付けやがって!明日の仕事倍にしてや…………








ムギュッ!















「あ?」











考え事をしながら歩いていると何かを踏んだ。遊佐はゆっくりと下を見下ろすと…













「……………楽しいかソレ」

「……………そう、見えます?」













廊下にうつ伏せて寝そべっている星夜がいた。















「すみません、起こしてください」

「はぁ?」

「一人じゃ……無理みたいで、」

「…………………………」














少しだけ息の上がっている星夜に冗談じゃないと悟った遊佐は小さく舌打ちした後、意外と優しい手つきで星夜を起こした。


そして気付く、
















「熱あんじゃねーかァ!」

「…………はァ?」

「はァ?じゃねぇ!赤い顔しやがってアホかてめえはァ!!

「そんな…、朝はちっともそんな症状は……ただ、ダルい感じがしただけで…」

「風邪の症状じゃねぇかよ!!何で気付かねーんだ!?」

「……そんな怒鳴らなくても……」

「お、おぉ、悪い」














いつもの調子を出せない衰弱した星夜に少し戸惑う。




とにかくここにいても埒が明かないと判断した遊佐は、不本意だが星夜を抱き抱え歩き出す。

星夜はそれに驚き抱えられた状態で遊佐を見上げる














「お、下ろしてください!」

「今手ェ離したら腰を強打するだろうな」

「……………………………」









怖ェェ……




何も言わないことにした星夜、












 

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