《MUMEI》 向かいのホームに先輩が三番目のいつもの扉の前にやってきた。 今日は半袖のフード付きのトップスにダメージのあるスキニージーンズ、時計はいつもの革製のものじゃなくて、ピンク色のゴツいやつだ。靴は黄色のスニーカーに黒縁メガネを付けている。 なんだかいつもより可愛い恰好だ……。 今日は女の子はなし…と日課の手帳に記入をした。 トップスの柄も見たくて凝視していると先輩と目が合ってしまう。 やばっ……、 視線を反らすも遅かったようで、先輩がこっちに向かって手を振っている。 いや、違う。 よく見るとこれはスマフォを指しているんだ。 よく見ると手帳には電話番号も書いてあり、急いでその番号にかけた。 『すぐ連絡してよ。』 耳元で先輩の声がしている……!当たり前だけど、昨日と同じで低音が少し掠れるカッコイイ声だ。 「はっはあ……!すみません!」 『今週の土曜日暇だけど、どう?』 「はあっ……!」 『じゃあ12時にメガネ君の方のホームで。』 「はあっ……!」 心臓が早鐘を打つ間にサクサクと遊ぶ約束が決められていた。 『はい。じゃあ。』 毎日先輩を見て、手帳に書くだけで幸せだった、電話は俺の心臓が堪えられない……。 土曜日には俺はどうなってしまうんだろう。 というか、あの先輩と出掛けるなんて何を着ようかな……兄ちゃんに聞いてみよう。 前へ |次へ |
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