《MUMEI》
〜プロローグです〜
その日、俺こと森野キアは自宅で目を覚ました。

すると、目の前にとんでもない美少女が俺を上からじっと見ていた。

というか俺に覆い被さっていた。

…何故!?

俺は脳みそが少ないであろう頭で必死に考えた。

俺は高校生一年生で、日本人らしい黄色っぽい肌をしていて、黒髪黒目で、どこからどうみても普通人だ。

と、俺は真上の彼女を見た。

腰の辺りまである、つややかな茶髪の長い髪。

肌はとても白く体も華奢で、目も大きいし胸なんか…とくに大きい。

「…あのー、キア様?」

そこまで考えていた時、ふいに美少女が話しかけてきた。

姿と同じく美しい声ですね。

……じゃなくって!

「君は誰?どうしてこんな所にいるの?」

「あぁ、それは当然です。昨日一緒に寝たじゃありませんか」

覚えがなかった。

いやそれこそ問題だろ。

彼女の言った意味を考えると、俺は無知な美少女を昨夜騙して自分の部屋へ(何故か)誘導。

そのあと、(何故だか)一緒に寝ようと俺が誘い(本当に何故か)一夜を共にして現在に至るのだ。

「は…犯罪じゃねーか」

俺は自分のした事に呆然とする。

ふと目の前の美少女を見ると、パッと周りに花が咲くのではと言わんばかりの笑顔を俺に向けてくる。
自分の顔が赤くなるのが分かった。

「えと、それで俺はどうしたら良いのかな?…やっぱ警察?君が言うなら従うけど、もし可能なら示談で…」

我ながら情けない言葉だ。

しかし彼女はとんでもない、と首を振った。

「警察なんかに、大事なご主人様を渡すわけにはいきません」

「え…ご主人…様?」

俺が困惑すると、彼女は恥ずかしそうに頷いた。

「はい。私はキア様の飼い犬、サクラです。訳あって、神様に人間にして頂いたのです」

漫画だと俺の頭上に?マークが付いているだろう。

まあ現実には、そういうやつはいないわけで。

彼女はかなりの美少女だが、残念な事に頭がちょっとアレな感じの人なんだ。きっと。

「えと、キア様聞いてます?」

「あー、うん聞いてるよ。だからちょっと来てくれないかな」

「は、はい。よろこんで、どこにでも」

彼女が何故か赤面しているなか、俺は穏やかな笑みを美少女に向ける。

そして彼女が俺から退き、ベッドから降りた瞬間に机の上にある携帯をすばやく取り電話画面で番号をプッシュする。

番号は勿論110だ。

俺は繋がったのを確認すると、すぐさま用件を伝える。

「あ、もしもし警察ですか。今自宅に不法侵入者が…」

言い終わる前に携帯の終了ボタンを美少女に押される。

「な、何すんだよ」

「何って、そっちこそですよ。何で私を警察に連れていこうとしてるんですか!ってか、自分は示談とか言っといて人は良いんですか!?」

もっともな突っ込みである。

「とにかく、話だけでも聞いて下さいよ」

「分かった。君を連行するのは、それからで良いからな」

「やっぱり連行はするんですね…」

がっくり、と首を落とす彼女から小さなため息が聞こえた。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫