《MUMEI》

渡す服を仕分け、レンタルショップで借りていた健全なアクションもののDVDを見て、頃合いを見計らい帰らせることにした。

両手に抱え込む紙袋の量の衣服を持たせる。

「今日は呼んで貰えて嬉しかったです……先輩とても良くしてくれて、一生分の運を使い果たしました。」

彼は奇天烈な言葉を選んでは俺を笑わせてくる。

「ふっ、そうか。次に来たら正座崩しなよ、空いてる日教えてな。」

「はいっ……」

真っ赤に染めた頬がカチコチと口を動かす。唇の形が上向きで思わず掴んでいた。

「あ、チョコ付いてたよ。」

嘘だけどね、オーバーヒートで立ちくらみを起こさせてしまった。このまま泊まって行かないかな。

「ありがとうございます……」

ふらつきながらも自力で帰って行ってしまって、名残惜しい。そういや、メガネ君の下の名前って知らないな。
住所もメアドも知らないから聞いておかなきゃ。

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