《MUMEI》
channelヒメ
おかしい……、おかしいといっても面白い訳ではない。
俺の最愛の弟、雪彦が奇妙なのである。

いつもならプロ野球なんかを見て談笑していたのに、ホームランを打ってもため息ばかり。

「雪彦どうしたんだよ?悩み事か?」

兄として心配だ。

「なんでもない……」

「なんでもあるだろ、昨日のデート失敗したのか?やっぱり俺もついて行けばよかった。」

友達と出掛けるから、服を貸してくれなんて言われたのは初めての出来事だった。淋しい反面、そんな色恋に興味持ち出した事へ成長を感じて涙ぐんでしまう。

「違う、デートじゃなくて。憧れの人が俺の為に時間割いて遊んでくれたんだ。……はあ」

憧れの人と遊んでどうして憂鬱なため息が漏れるんだよ。

「雪彦はのんびりしたところがあるから、その憧れの人を誤解させてしまったのか?」

俺が居ないと小学校の通学路までの信号を渡れないくらいのんびりしていた。
それが俺には個性だと受け入れられず段々と苛立ちに変わってしまい、親の離婚と同時に大喧嘩したことがある。
お父さん子な雪彦には母親に引き取られたことで、追いていかれた心境だったのだろう。

今はこうして仲良く戻れたが俺も雪彦も荒れていた頃があった。それが反動したように毎週必ず四回は会い、家ではトイレ以外はほぼ一緒に行動している。

「違うんだ……俺が、知らなかったから悪いんだ。」

「……俺達兄弟だろ?心配なんだ、なんでも言ってよ。」

この兄弟だろ?は、雪彦に効果てきめんの魔法の言葉だ。

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