《MUMEI》 頭を撫でて抱きしめる。 「兄ちゃん……。」 小さく抱きしめ返してきた。くっ……可愛い。 ビン底眼鏡が素顔を隠しているが、雪彦は母親似の丸い輪郭で柔らかな頬を持っている。(雪彦が母親に似過ぎているせいでお父さん子になったきらいがある。) 眼鏡の下に眠る小鹿を思い出させるウルウル大きな黒目を知っている人は少ない、自分が教えたくないのもある。 俺は面長で、雪彦とはまた違う作りをしているせいかこの弟が可愛くて可愛くて仕方がない。 「教えてくれるかな?」 「兄ちゃん怒らない?」 「怒らないよ。」 「神林先輩がね……」 「なにい!!」 俺が中学最後の試合に、華々しい連続ホームランを飾るところでキャッチしてくれやがったあの神林……。 「怒らないって言った……」 「ごめんごめん。それで?」 我慢しろ俺っ……奥歯を噛み締めて笑顔を引き攣らせてしまった。 「神林先輩が、俺が先輩のこと好きだって教えてくれて……」 「は?神林が雪彦に告白したんじゃなくて?」 「兄ちゃん!そんな、先輩は俺が先輩を好きなことを教えてくれたんだよ!俺が好きでも普段通りに接してくれたんだ。」 雪彦はのんびりしているところがあって、だからいつかは騙される予感はしていた……。 前へ |次へ |
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