《MUMEI》

 







―――――ドタドタドタ、








スパァァァン!!





「あのォ―――――!!」

「うるせぇぇ!」






ブォン!――…






「ぎゃぁぁぁ」










襖を開けると同時に頬ギリギリで飛んで来たのは習字用に使う文鎮、ゴン!と鈍い音をたて後ろの柱を凹ませながら落ちた……。



もし当たっていたら自分があの柱の変わりになっていただろうと考えただけで冷や汗が伝う







投げつけた本人である遊佐は部屋の奥で筆を片手にチラリと横目で、



「何だてめえか、」と、先程のことなど謝りもせず興味の薄い表情を浮かばせた。













「……………な、何考えてんですかァ!?あた、あたし、もしコレ当たってたら顔面酷いことになっていましたよ!?」

「それァ、元からじゃねーか?」

「え、………ちょっ、え…?」









ストレートすぎる遊佐にに返す言葉も見つからず半泣きになる。













「悪ぃ悪ぃ、いつもの栄角かと思ってな」

「女の一架さんに文鎮投げるなんて…」





ゲス……とは言わなかった。

殺されるから









「アイツは襖を開けるなり薙刀投げてくるような女だぞ。つーかアイツは女なのか?」









あたしに聞くな






つか、薙刀て……あれでしょなっがいヤツでしょ?刃の反り返った…


遊佐さんに向けて投げつける一架さんの姿が安易に想像出来てしまって軽く笑えた。すると、それを静かに見ていた遊佐が低い声色で、










「もう熱は下がったのか?あんま調子のってるとまたブッ倒れるぞ」










遊佐のその言葉でハッ、としてここにきた最大の理由を思い出した。

あたしが知りたいのは、聞かなくてはいけないのは、












「こ、こここここ」

「お前は鶏か」

「ち、違います!そうじゃなくて、この、浴衣!誰があたしに着替えさせたんです!?まさかとは思いますが…………」










焦って鶏の鳴き声みたいになったが言えた!

そしてどうか的が外れてますようにッッ







祈るような気持ちで言葉を待ったが、遊佐はそんなことお構いなしのサラリとした口調で、









「ああ、………俺だ」










平然と言いやがった……。








 

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