《MUMEI》

路地裏に入ると飲み屋だらけだ、その中の一つのバーに連れて行かれた。昼間はランチが食べれるらしい。
スマートに行き先を決めれる神林のエスコート慣れは高校生とは思えない。

中々、量の割には安く頼めるし変にオープンになっていない落ち着く雰囲気の店内だ。

「あ、俺ちょっとお手洗い行ってくる。」

雪彦が席を立つと気まずい時間が暫し続く。

「神林って彼女居たよな……?」

「野球辞めてからは作らなくなった、今は友達とだらだら遊ぶのがちょうどいい。ヒメのが恋人出来たでしょう、なんかわかる。」

「俺はいいんだよこの助平が!」

すぐ俺を弄るのはこいつの悪い癖だ。

「俺だってメガネ君と遊ぶ権利あると思うけど?ヒメって我が儘だよね、まあそこが可愛いかな。」

「……相変わらず気障なやつ、女子が毎回こんなんでキャーキャー言ってて阿呆らしかったわ。
今の雪彦には絶対使うなよ、雪彦は俺の天使なんだからな。お前が近くに居て女遊びとか覚えようものなら殺す。」

「ヒメってこんなブラコンだったっけ?」

「ブラコンって言うな、兄弟愛と言え。最近だよ、お互い仲良くなったのはな。雪彦は俺が中学上がる頃には大分丸くなって、俺も大学受験終えてゆとりが出来て頻繁に会うようになった……そういや雪彦が野球に興味持ちだしたのもそれくらいか。」

その時は、いきなり雪彦が神林の名前を仕切に出して来るようになっていたからムカついてちょっと避けてた。

「メガネ君って小学生の頃はメガネしてなかった?」

「ああ。背丈なんて小柄な女の子くらいで声変わりもしてなくて、それはそれは天使で愛らしかった。」

「そっか……。」

急に一人でにやけてて気味悪い。

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