《MUMEI》

春馬は立ち上がり運転席に乗り込んだ。


「……」


俺は煙草を吹かしながらそんな春馬を見つめる。


二人して携帯春馬んちに置いてきちゃって誰も助けに呼べなくて。


煙草ぐれー我慢すんだったと思いながら何気なく視線をコンビニの入口に移すと、ちょうど男が一人出てきた。



キリキリキリ



「あ〜っ!かかったっ!」

春馬が嬉しそうに叫んだ。
情けない頼りなさげな音をたてながらエンジンが突然かかってくれた。

瞬間俺は視線を軽トラに戻し、そしてそこに駆け寄った。


「やったじゃんっ!」

「おうっ!」


プシュ〜…


「「……」」



しかしエンジンは直ぐに止まり



「あ〜もうっ!」


春馬は笑顔を一瞬で引き攣らせ、そしてまたキーを回した。

キリキリキリ…カタタ…カタタ…



「「……」」


プシュ〜…



「「……」」





キリキリ、カタタ…


プシュ〜…

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