《MUMEI》

放課後、永江のことを心配しつつ二年教室のある二階から一階に降りると、松葉杖をついた鴒が待っていた。
「一年生だけ早く終わるなんて知らなかったよ…」
ぼやいている
「仕方ないさ
ほら、行くぞ」
靴を履き替えて鴒を待つ。
しばらくして松葉杖をつきながら鴒が出てきた。
「待たせてごめん」
「気にするな
…じゃあ行くか。」

「ねぇ、由」
「なんだ?」
「明日、お昼一緒に食べてもいい?」
「ああ、いいけど
もう一人居てもいいならだけど」
「あ、知ってるよ
今日一緒にお昼食べてた人でしょ?」
なんで知ってるんだよ。
「見てたのか?」
「違うよ、勘」
女の勘って怖いなぁ…。
「女の子?」
「さぁな」
「ふーん…
女の子なんだ…」
なんでコイツは俺の話を聞いてくれないのだろう?
「…それも勘か?」
「うん
まあ、由って分かりやすいから
二択なら完全にお見通しだね」
「…」
情けなくなってきた…。
「で、どんな人なの?」
「うーん…
ちょっと変わってるけど
可愛いし、面白いし
いいヤツ…だと思う」
「ベタ誉めじゃない…」
何故か不機嫌そうな鴒。
頬を膨らませているのが子供っぽい。
「…もしかして、彼女さん?」
こころなしか声が揺れているように感じるのは気のせいだろうか?
「いや、違うよ
昨日知り合ったばかりだし」
衝撃の出会いだった。
「そうなんだ…」
今度は少しほっとしたようだ。
「今日の鴒、表情がコロコロ変わって面白いな」
「えっ、ちょ…
み、見てたの!?」
「だって面白いから…」
「あぅ…恥ずかしい…」
赤くなって顔を手で覆っている。
やっぱり面白い。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫