《MUMEI》
7月16日
最近、永江が休みがちだ。
いつも通り教室に入るが、見馴れた姿は無い。

朝から担任の話を長々と聞き、短すぎる全校集会を終えた後、俺は普通に帰れるはずだった。
だったのだが…
「中村、後で職員室に来い」
「…?
わかりました」
担任に呼び出された。

職員室では担任がなにやら分厚い封筒を持って待っていた。
「おう、来たな」
「なにか用ですか?」
「お前、永江と仲いいだろ?
アイツにこの封筒を渡して欲しいんだ」
「…いいっすよ」
「悪いな、頼んだ」
プリントの入った封筒を渡される。
封筒の裏面には地図が添えてあった。
「その印のところが永江の家だから」
俺が永江の家を知らないことまで知っていたらしい。
「ご丁寧にどうも」
俺は職員室を出た。

生徒玄関へ行くと鴒が待っていた。
「待ちくたびれたよ…
あんまり女の子を待たせないほうがいいよ」
「悪かったな」
いつものように鴒と並んで歩き出した。

「ねぇ、由」
いつものように鴒が話し掛けてきた。
「なんだ?」
「僕、明後日からお母さんの実家に行くんだ」
「へぇ、そうなのか」
知らなかった。
「そっ、それで、もし良かったらなんだけど…
一緒に来ない?」
「…いや、遠慮しとくよ
せっかくの団欒を邪魔する訳にはいかないからな」
「…そっか」
少し残念そうな鴒。
もしかして、ついてきて欲しかったのだろうか?
「由ってさ、凄く鈍いよね」
「どういうことだ?」
「…なんでもない」
ぷいっと顔を背ける。
家に着き、鴒と別れる。
「俺ちょっと用事あるから、翼に伝えておいてくれ」
「うん、わかった
…どこ行くの?」
「クラスメイトにプリントを届けに行く」
「ふーん…
いってらっしゃい」
「おう」
俺は地図を頼りに歩き出した。

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