《MUMEI》

「家まで送るよ。」

先輩が荷物を半分持ってくれる。

「駅からは自転車なんだね。」
「う……後ろ、乗ります……?」

「んー……無理かな。」

「ですよねっ……。」

舞い上がって冷静な判断が出来なくなっていた。あの先輩が俺と二人乗りなんて、してくれる筈ないじゃないか。

「もう少し足が上がるようになれたらで、いい?」

後ろに乗るのが嫌な訳じゃなかったみたいで嬉しくなる。
先輩の足も完治が難しいもので一生付き合っていかなければならないらしい。

「タクシー拾えばよかったですかね?」

「今日はゆっくり話して帰りたいからいいよ。」

先輩と肩を並べて歩くのはまだ慣れない。
みんなが振り向く。
そして静かに微笑んでくれるとそこだけ輝いて見える。

「メールって……毎日するんですか?」

「勿論。一日会ったこととか、美味しいご飯とか。あとヒメの面白い顔とか?写メがいいなあ。メガネ君自撮りしてよ。」

「それは嫌です!」

自分で写真なんて、俺が自分で撮ってたら笑い者じゃないか。

「俺の自撮りと交換しようよ、そしたら離れている期間中も手帳に俺の服装埋めれるよ。」

先輩の提案に断れる筈が無かった。

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