《MUMEI》
斎籐黒乃とゆう実体
 










ノート、文房具、支えの無い地球儀、何故か転がる複数のぬいぐるみ。ほかにも様々なものが落ちてたり積み重なっていたりした。


ソファーにも机にも床にも。






歩けないほどではないが、足元を見ながらじゃないと何か踏んでしまいそうになる。















「どうぞ、入って下さい」

「失礼します…」











ちらかった部屋の奥、日が射し込む窓辺に彼はいた。私がぎこちなく入ると同時に彼は振り向く


ネクタイをせず、第二ボタンまで開け、少し癖毛の髪と澄んだ瞳は混ざりけの無い黒。身長は平均的だがやや痩せ気味。そして予想していた…いや、それ以上に整った顔をした彼、斎籐黒乃がそこにいた。













「それで、誰なんですかね」

「あ、私、雑誌記者の園原恵と言います。あのこれ名刺で…」

「ああ、はいはい」











初めて目にする彼、ずっと探していた彼、私は内心興奮状態だった。でもそれを露にしてはならない。こうゆう時こそ冷静さと慎重さを忘れてはいけない。

この仕事はじわりじわりと自分のペースに持っていかないと真実は炙り出せないのだ。欲にまかせて知りたいことを食い散らかせば記事は雑になる。

私は気を落ち着かせるように軽く深呼吸をした……









彼はスタスタと私に近づき、その細長い指で私の手にする名刺を抜き取った。

彼は名刺に目をやり眉間に皺を寄せた
















「………ここの雑誌、以前にも僕のとこに取材しに来られましたよ」

「え!?そうなんですか?」

「はい、半年ぐらい前に」

「…………へ―…………」










知らなかった。初耳。

私がここの会社に入社したのは二年前、だがそんな記事が載ったことはない。誰なのだろう……

















「で、何が知りたいんです?」













笑顔とゆうものを知らないのか、ただ無表情な顔を私に向ける。

園原は、待ってましたとばかりに鞄から革の生地で出来た表紙の小さなメモ帳とシャーペンを取り出す。















 

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