《MUMEI》

家に帰ると、リビングがなにやら騒がしい。
行ってみると、鴒と翼がゲームをしていた。
「ただいま」
「あ、お兄ちゃん
おかえりなさい」
「おかえり、由」
周りには多量のお菓子とジュースが散乱している。
「今日はパーティーか何かか?」
「うん
今日から夏休みだから、お姉ちゃんと夜更かしパーティーするんだ」
「二人だけだと寂しいからね
由も一緒にどうかな?」
…たまにはそういうのもいいか。
「なら、参加させて貰おうかな」
それから数時間、俺たちは騒ぎ楽しい時間を過ごしていた。

…いつの間に眠ってしまったのだろう?
月明かりに照されたリビングのソファーの上で、妙な寝苦しさを感じて目を覚ました。
ソファーと対面の位置にある椅子で翼が眠っている。
鴒はどうしたのだろう?
ぼんやりとした頭で考えながら起き上がろうとすると、その答えが見つかった。
鴒は俺に抱き着いて寝ていた。
まだ幼さを残した、無防備な寝顔を見せている。
俺の理性よ、耐えてくれ…。
独り葛藤していると動揺が伝わったのか、鴒が目を覚ました。
「…ゆう?」
ドキリと、心臓が脈打った。
「な、なんだ?」
「もしかして、由は僕のことが嫌い?」
いきなり何を言い出すのだろう。
しかも涙目である。
…寝ぼけているのだろうか?
「そんなこと無い
俺は鴒のこと、好きだよ」
「じゃあ…
じゃあ、なんで僕の気持ちに気付いてくれないの…?
こんなにも好きなのに…」
…その好きは、もしかして愛とかそういうのと同義か?
「なぁ、鴒…」
話し掛けても返事が無い。
その代わりに静かな寝息が聞こえた。
寝たのかよ…。
まあ、いい。
俺も寝ることにしよう。

俺はこれ以来、妹同然だった幼馴染みを、一人の異性として意識するようになった。

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