《MUMEI》

四泊五日の彼氏と理想のリゾート特集と銘打った女性向けファッション誌の企画に俺の所属事務所から数人ピックアップされた。
どうやら、俺の表紙の雑誌を知っていたようで白羽の矢が立ったのである。
ぬるーくモデルなんてしていた俺には正直迷惑な話であったし、両親や学校側にも説明する、足の方も良いマッサージの店を向こうで探して筋力が怠らないようにするなどと妙な意気込みに押されて嫌々ながらスケジュールに入っていたのだった。

それが今になって、更に苦痛になる。

五日もメガネ君にも会えない苦痛だ、メガネ君に纏わり付いてる坂巻はウザいし……仮病を使ってしまいたい。
そして、家にメガネ君が看病しに来てくる……これは名案だ、いつか使おう。



「沖縄で撮影ですか、素敵ですね。」

「お土産何がいい?ソーキソバ?」

「先輩の渡してくれたものなら何でも嬉しいです……」

今朝のメールのやり取りである。
メガネ君は家や人目のつかない店なんかでは話してくれるが、坂巻の前だと萎縮して距離を置きたがる。
とりあえず、坂巻ウザい……。

後輩としては嫌なやつではないけどメガネ君の前で、あからさまに好色な感じがぶん殴りたくなる。
キャバクラで若い子に入れ込む爺やメイド喫茶で狂ったように注文を頼むオッサンのそれに近い。
俺が盲目になっているせいか、本気で思い出すと苛立つ。

また、メガネ君もはっきり断らないのである。それは俺達はまだ恋人同士じゃないのもあるけれど……。

明後日にはこのメガネ君の地から離れてしまうのかと考えると堪えられない……

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