《MUMEI》
初めてのメール
 家に帰ると同時、メールの着信音がした。取り敢えず母さんに「ただいま」とだけ伝えると、二階の自室へ入った。

 メールの文面はこうだ
『初メール
 届いてるかな??
 リズだぉ
 
 勉強会の日程これでいいかな??
 日時:25日 AM9:30
 場所:市民図書館

 返信待ってまーす(≧∀≦)』

「なんだコレ……キャラが違いすぎる!? これが世に聞くギャップというヤツか、恐ろしい」

 とりあえず「それで頼む」と返信し、ご飯と階下から呼ぶ声が聞こえるので下に下りる。

「やっときた、何してたのさ?」

「んー、ちょっとね……。お、うまそ! いただきまーす」

 今夜の柳瀬宅の晩ご飯は生姜焼き。
 てかマジで美味い!元ヤンの母さんでも料理はピカ1だな!

「どうよ! なかなかのモンでしょ」

「ん、なかなかどころじゃないよ、美味すぎ!」

「んー、あんたうまいね〜。母さん、好きだよあんたのそうゆうところ」

「ありがと、俺も」

「///」

 拓真は天然なのだろうか……誰に対しても素直に思ったことを口に出す。昔からどんな人にもこんなだから、周りに好かれやすいのだ。バカだが……。

「拓真にもいつかイイヒトができんだろうねぇ」

「?母さん、やきもち妬いてるの?」

「ん〜ん、何でもー」

 笑って生姜焼きを一口食べる母さん。俺は真面目クサった顔をして、箸を置く。

「大丈夫だよ、母さん。母さんはいつまでも母さんだし、嫌いになることも、縁が切れることもないんだから」

 素直に思ったことをそのまま、何も飾らず口に出す。母だからこそ、痛いほど分かる。だからこそ

「?泣いてるの?」

「ゴミが入っただけ、大丈夫」

 たった一人の息子の手が、たった一人の母の手に優しく触れる。それだけで心が温まり、安心した。

 しばらくして、拓真は二階に上がる。

「あー、こりゃ私の方があの子を卒業できんかもしれん」

 苦笑しつつ、んーと伸びる。立ち上がると、後片付けを始めた。

 寝る前に携帯を確認すると、一件メールが入っていた。

『久しぶり
 未定だけど、帰るつもり
 一応伝えとくネ♥
 優しいお姉さん、茉莉菜♥』

「姉さん、帰ってくるんだ」

 東大へ通っている21歳の姉、茉莉菜は、和風美人。中身は大雑把な明るい姉御肌。長身で、スタイルも良し。初恋が姉でしたーてことは無いが、そうなっても可笑しくないほど弟が認める美人なのだ。

 兎に角、その日は返信せず、ベットに入った。

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