《MUMEI》
2人きりの勉強会…?
 この図書館には学生優先の個室が設けられていて、そのうちの一室で俺達は勉強道具を広げていた。

「ねぇ、さっきの"路地裏の孤竜"……て何なの? やっぱり気になって」

「ん? ただの昔の呼び名だよ、二つ名みたいな? お前もあんだろ、"ツンデレの美少女"…とか」

 ゲシッ
 すみません、顔が凹んだんですが……

「つまり、昔は悪かった……みたいな?」

「まぁそんな感じ。でも一回しかやってないぞ? 路地裏で不良校を一人でやっつけたから、印象に残ってんのかな?」

「な!? 柳瀬って、みかけによらず、強いんだね……」

「それは失礼なんじゃないかなぁ? リズさん?」

 何時間か……
 集中していたせいで、すでに昼時になっていることに気づかなかった。朝食にもありつけなかった俺の腹はグゥグゥと空腹を訴えている。

「ごめん、俺なんか買ってくるわ。リズはどうすんの? 買ってこようか?」

「え? あぁ、もう昼時かぁ。私、昼食多めに作ってきたから一緒に食べない?


「マジか? じゃぁ遠慮なく〜」

「味は保証しないからね」

 照れ隠しにそう言いつつ、大きなバスケットを取り出す。中身はサンドイッチだった。

「美味そー! でもこんなに大変だったんじゃないか?」

「そんなことないわよ! 五時起きで張り切って作ったりしたわけじゃないんだから」

「……ありがとう」

 一言、そう告げると、リズの顔はボッと赤面した。サンドイッチを一口ぱくり。

「ぅんめー! 料理上手なんだなぁ」

「ま、まあ、当然だけどね!」

 すごくうれしそうにニヤケないよう口角をヒクヒクさせる。そんな姿がなぜだか微笑ましかった。

 その日、閉館ギリギリまで勉強を教わり、別々の帰路に、つく。

「今日はありがとう、また頼むよ」

「仕方ないわね……楽しかったけど」

「俺も。じゃぁな」

 お互い背を向け歩き出す。
 夕焼けがやけに眩しく、家への道を焼くように照らした。こんな日が、続きますようにーー。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫