《MUMEI》
笑顔
「さあっ、晩ごはんの時間よ!」





娑亜紗は髪の毛をふたつにたばねて、エプロンをした。






「あんたお嬢なのに料理できんの?」





「当然でしょ! 花嫁修業の一環よ」






娑亜紗は自信満々に鼻でふふんっと笑った。






……が、何がおきているのかわからないが、台所から





ダンダンダン ズルッ「あらっ!?」



ジュウウゥゥ「きゃあっ」ガタン ドン グシャ「きゃ―――っっ!」





というスゴイ音が聞こえてきた。





「……」



来駕はポカーンとしている。





「あ……、俺自分の分は自分で作るわ」





来駕は、はぁと小さくため息をついて台所に入っていった。








娑亜紗は床に座りこんで頭からボウルをかぶっている。





「あっ、台所は男子禁制よ……」




と言って娑亜紗は言葉を止めた。






「!?」





スパパパパパパパパッという音とともに




来駕の手が何個かになって見える。





とっても動きが早くて1分もたたないうちに






「できた」っと言って一人で食べ始めた。






す……、すごいわ……




おいしそうー




娑亜紗がよだれをたらしていると





来駕がクスッと笑って「食いたきゃどーぞ」といった。






ムカー  



バカにしてっ






「どっ、どーせ見かけだけでしょ!! いただきますっ」





ぱくっとひとくち食べる。





「!」




「いかがですかお嬢様?」




来駕が聞くと娑亜紗はとっても笑顔で




「まぁまぁね」と答えた。





すると来駕がブッと吹き出した。




「!?」




「正直……」



と言ってうはっと笑った。






「………!!」




来駕がはっと正気に戻る。





「あなた……、フツーに笑えるのね! 鬼の目にも涙もとい笑顔ね!



そのほうがいいわよっ」





娑亜紗がドキドキしながら言った。





「うっせーよ早く食えっ」




と来駕がプイッと顔をそむける。





あっ、戻ってしまったわ






理想の『来駕様』とは全然違う笑い方と反応だけど




これはこれで可愛いかもしれないわ……

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