《MUMEI》

「ユキー、お友達来たわよ」

部屋に向かって、母親が叫んでいる。お友達……?昼八が月刊の漫画でも貸しに来てくれたのかな。

「はいはい、ちょっと待ってて……」

インターホンの子機に向かって呼び掛ける。

『随分待ったよ。』

「…………っ!」

間違いない、この声は先輩だ。

「あ……う…… うお……明日帰るんじゃ……」

馬鹿だ、もっと気の利いた話したいのに!

『早く終わらせて帰って来た、メガネくんに会いたくて。』

「うわあ!」

『電源切ってたよね?』

「今は先輩と距離を置きたく……わっ」

扉をノックするので、怒られているかと錯覚する。



「ユキ、入れてあげればー」

母さんがノック音に反応している。

「わかったってば……すみません母親が先輩をあげなさいって。やっぱり先輩が目の前に居たら拒めないや……電話の方には悪いけど、好きです。」

俺、今とても自然に告白出来た。


『……俺に許可なく坂巻と付き合ってんの?』

「いえ、坂巻と付き合ってなんかいませんよ!ただキスされて脇舐められただけです!
俺、先輩とそのっ……したくて……抱い……いや、抱きしめさせて下さい!」

ついに、先輩に大胆な告白をしてしまった!
また扉をノックされたので母親が俺を呼んで急かした。
家の鍵を解きドアノブを回す、先輩に早く会いたい一心だ。抱きしめる準備をしておいた。

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