《MUMEI》
channel王子3
まだ夢の中にいるみたいだ足元がふわふわする、眼鏡くんは柔らかくて抱きも心地がちょうどいい。

「ユキーお友達ご飯食べたのー?」

メガネくんのお母さんが、廊下へしきりにユキって呼んでいて、メガネくんが家族にどれだけ愛情をかけて育てられていたかが垣間見えた。
お肉の焼ける良い匂いが立ち込める。


「先輩、うちは今日の晩御飯はすき焼きなんです。一緒にどうですか?」

紅潮した頬と意図しない上目遣いに色香が漂う。
ええ、いただきますとも。
……の、前にこの散乱した花束をどうにかしないと。

急いで拾い上げる、花びらは箒で集めた。

「……怪我しなかった?ついカッとなってぶつけちゃった。」

「先輩の綺麗なフォームを間近に見れて感激しました……どうして花束なんですか?」

この、鈍感ちゃんが……!褒められてしまうと、怒るに怒れない。

「プロポーズには花束だって言われたから。」

結婚したい相手に渡すものは指輪以外だと花束と、現場の女性チームに質問して統計に出たので空港から真っ先に花屋に走った。


「早く……、片付けましょう!」

また、はぐらかす。照れ隠しなのは知っているんだ。


「いいんだ。
メガネ君が俺に、はいって言うまで百回でも二百回でもプロポーズするから。」

頑固なメガネ君に屈した訳じゃない。
確かに俺を求めてくれて気持ちが通じ合ったんだから、少しずつ育てていけばいいんだ。

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