《MUMEI》

坂巻と出くわして、余計な時間を費やしたのが勿体なかった……昔は少しダサくて従順な後輩だったのに。

今やちょっと身奇麗な憎い恋敵だ。
あの、いきなりのお付き合いメールも腹立つ、メガネ君を誑かしたのだろう。


「それ……全部花束ですか。」

見ればわかるだろうが。

「俺、急いでるから。」

無視してしまえ、坂巻を避けようと花束で払う。


「立花って、白くてもち肌ですよね。」

「はっ?!」

あからさまに敵意が剥き出してしまった、彼氏面かよムカつく。

「その目つき、怖いです。」

当たり前だろ、公道じゃなかったらぶん殴っていた。


「坂巻より俺のがメガネ君に好かれてるから、勘違いじゃねえの?もし本当に付き合っていたとしても奪い取るけどね。」

略奪愛上等、力ずくでも奪い返すつもりで宣戦布告してやる。

「先輩は……だから、そのカッコイくて……怖いです。」


「は?」

坂巻が俺の背中に体を寄せてくる。
そのままヘッドロックするも、鳥肌が全身を覆った。

「ゴホゴホッ……先輩を追いかける立花を見ているうちに、先輩へも惹かれていたんですっ……わざとそれで立花にちょっかいかけて相手にしてもらいたくてっ……さっき気付きました。
俺は先輩に抱かれながら立花を抱きたいって!」

思わず聞こえないフリをした。
ド変態じゃねえか……。
早くメガネ君に癒されたい、立花に近づかないようにも忠告しよう。

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