《MUMEI》

萎れた大量の花にも疑問はないメガネ君のお母様も、メガネ君に劣らずド天然だ。
トイレを借りた時に玄関いっぱいにコップで活けていたのを見た。


「部屋、初めてだ。」

こじんまりとした長方形の部屋に、シングルベッドが大半のスペースを占めていて、床に折り畳みの小さなテーブルを出すと一人しか座れない。
俺がベッドに上がると、ぎこちなく床にメガネ君は座った。


「ユキー!飲み物ー。」

お母様が飲み物とキンキンに凍らせたチューペットを運んでくれた。


「ありがとうございます。」

嬉しそうにお母様は去っていく、メガネ君もこれくらい耐性がついてくれたらいいのにな。

「先輩のマンションとは比べものにならないくらい小さくて……不便でしょうが、すみません。母さんも先輩がカッコイイから浮かれちゃって……。」

気にするまでもないことを延々と考えているのも可愛い。
どうでもいいが、チューペットの切り口を噛みながら舐めるメガネ君の仕種がエロい。
俺は端の出っ張りのあるところにハサミで切り込みを入れて、一本丸々吸う派だ。


「チューペット美味しいね、これオレンジ味。イチゴひとくち頂戴。」

イチゴのチューペットを上から戴く、メガネ君も同じことを考えているのか俺から一ミリも視線が外れない。


「熱視線送って、よそ見するから溶けたよ。」

メガネ君の握る指に溶けたチューペットのイチゴ味が滴り落ちそうになり、口で拭う。

「ひっ……」

彼は体を揺らしてカクカク驚くので、掴んでいる手首だけ落ちてゆきそうだ。

「ユキー、林檎もあげる。」

ウサギにカットされた林檎がお母様から渡された。

「有難うございます。」

オーバーヒートで動けないメガネ君の代わりに受け取る。
かっわいーの……これで意識朦朧とするなら、いつか心臓止まっちゃうんじゃないか?

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