《MUMEI》
本物
「私……、私いつもあの写真を見て元気をもらったの……」





娑亜紗が叫んだ。





「ここにはいないあなただけど、その時だけは近くに感じたの」





「会いたいけど会えないあなたを私ずっと……」





来駕が娑亜紗の言葉をさえぎって




さっきよりも大声で怒鳴った。





「そんな奴いねーんだよ!!」






娑亜紗が大きな目をさらに大きく見開いた。






「写真なんて……、いらねーよ」





来駕が娑亜紗を池から引き上げて言った。





「本物がここにいるだろ」





来駕が娑亜紗のことを真っ直ぐと見つめる。






娑亜紗の心臓がドクッっと大きな音を鳴らした。





来駕が娑亜紗から目をそむける。





「……まぁ、お前の理想とは違うけど……」






……そうよ




私がずっと想っていたのは優しくて紳士……






この人とは全然違う人。





娑亜紗が来駕の着物のすそをきゅっとつかむ。





だってあなたは




私から離れていくんでしょう?





娑亜紗が来駕のことを見つめる。






「来駕……」




私――――――……

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