《MUMEI》

爆笑の渦の中でひとしきり水を飲みまくると、男は満足したように両手を後ろにつき、空を仰いで
「ふー、生き返ったぜぇー」
嘆息した。
空を仰いだ拍子にフードが背中の方へとめくれて、男の短く刈り上げた頭と背中に背負った大剣の柄が鬼達の前で晒された。
モヒカンがドレットヘアーにした仲間の鬼と、素早く目配せを交わす。
「さてと・・・・」
男は懐から取り出した水筒に水を詰めると、相変わらず自分をじっと見ているギャラリーには全く無関心そうに、ゆったり立ち上がり、フードを下ろして、再び歩き出そうとした。
「ケケ」
モヒカンが喉の奥で、奇妙な笑い声ともうなり声ともつかぬ音を漏らした。
次の瞬間には大地を蹴り、人間離れしたスピードで男へ向かって走り出していた。
「きしゃーーっ!」
手の甲に装着した鉄の爪が、陽光を反射して銀色に輝きながら男の背中ヘふりおろされる。

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