《MUMEI》
気まずい三角関係
 今日も美少女たちが俺を争って火花を散らす。モテる男は辛いゼ!

「だいたいお前はツンデレ?か知らないが、男受け狙いすぎなんだよ」

「!なんですって? 別にあなたのように、欲求不満をムンムン出してるわけじゃないんだから、ましでしょ」

「ぉまっ!? ほんっとにヤな女!」

「結構です、あなたと話すくらいならそう思われたほうがましよ」

プイーー
 リズはそっぽを向くと、俺に話しかけてきた。

「そーいや、もうすぐ中間ね? 勉強会の成果だしてよ、ちゃんと」

「あぁ、分かってるよ。あれから勉強に追いつけるようになってさ、結構いいせんいってっと思う」

「ふーん、ならいいけど……」

「は? 勉強会?」

 その会話に突然望も加わってきた。

「ぁぁ、こないだリズに教えて貰ったんだ」

 そのままのことを告げると、ブスッと膨れっ面になって、そっぽを向いてしまった。

「おい、何だよ急に」

「あんなやつに教えて貰うな! 私が教える」

 どうしたことか、パンツを見てしまったあの日の放課後、「あんなことがあったんだから、責任とって貰うから」と、自称俺の彼女を名乗っている。
 全く、こまったもんだよ……。恋人にされてることじゃなく、自分から言ってきたのに、手を握るだけで殺しかける勢いなんだから……ハァ。

「ねぇ……今日、一緒に帰れる?」

 ボソリと望は呟く。
 普段は男言葉なくせに、こういう時だけ汐らしくなって……なんていうか、女ってズルい。

「ぁぁ、いいよ」

 パァと花が咲いたような笑顔をこちらに向け、その行動に恥ずかしがる。
 お互い赤面し、いつのまにか視線を絡ませ、微笑んでいた。通じ合ってるかのように。

「はいはぁい、お二人さんそこまで!」
 
 その空間をリズが体ごと割ってくる。
 少し苛立ち気味に。

「まぁ嫉妬するなって、愛してるよ、リズ。」

「……」

「スイマセン、無言で顔にストレート落とすのやめてくれませんか姫?」

 ゴゴゴゴゴッーーと効果音を発するが如く鬼神へと変貌を遂げていく望に神経が逆撫でされる。

「はぁ? 別にそんなんじゃないしっ!
ただ見苦しかっただけよこのキモナルシウザクソムシが!」

 そんなこんなでようやく放課後を迎えた。約束どうり、俺は望と帰る。たまに下校中の生徒が見えるが、放課後デートのようなこの感じはなんなんだろうか……。狭い道なので近づき、歩いてるてたまにコツンと指先が触れ、そのたびにお互い赤面する。そんな帰り道。

「ねぇ……リズのこと、どう思う?」

 無言の空間に、始めに口を開いたのは望だった。

「どうって……別に? 好きだけど?」

「…………ゴス」

「グハッ!?」

 唐突に殴った望の瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。

「じゃぁ……私は……」

 蚊の鳴くような小さな声を震わせ、聞くのが怖いみたいな表情を作り、こちらを上目遣いに見上げてくる。

 だが俺は、それに応えることができなかった。嫌いとか、好きとか、そんな問題ではなく、目の前の光景に考えるより先に体が動いていた。

「ごめん、望! 続きはまた!」

「ぇ?」

 走れ!走れ!走れ!

 俺には見えた、あの角を曲がるリズと、その後ろ、3mほど後ろをぴったりとつけた四十代くらいの小太りのキモ男が!

「ハァ ハァ ハァ」

 呼吸は乱れ、肺がきしきしと軋み、横腹が痛い。だが、止まろうとは思わない
。だんだんと近づいてきた影に、ニヤリとひとつ笑う。

 さぁ、どう料理してやろうか……

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