《MUMEI》

「オォ、こんな所に!」
男は不意に身をかがめると、砂の中から何やら金色に光る物を拾いあげた。
モヒカンの鉄の爪が空を切り、背中の肉を裂く代わりに、男のマントを奪いさる。
だがモヒカンはそれ以上踏み込もうとはせず、いきなり電気にでも触れたかのように、男から飛び離れていた。
「どうした?」
仲間の問いにも、モヒカン自身どう答えれば良いのかわからないようだった。
長年の無法の日々に培われた 本能のようなものが、男からある種の危険を察知したとでも言うのだろうか?
だがモヒカン自身がすぐにおのれの臆病風と受けとり、照れ笑いと共にそれを
否定した。
「あ?何でもねー」
モヒカンは奪いとったマントを、ゴミでも拾った みたいに傍らへ放り捨てる。
男は 砂の中から拾いあげた光り物をしげしげ眺めながら、ぶつぶつと何やら呟いている。
「こんな所で火星開拓地の通貨にお目にかかれるとは!西の果てじゃあ、今だに星へ行く船が、『第二の太陽の夜』以前のように、定期的に出航していると聞くが・・・・。いつかは俺も乗ってみたいもんだぜぇ。とりあえずお宝ゲット。
・・・・て、急に日当たりが良くなったと思ったら・・・・。
おいお前ら。それは俺の大事なマントなんだ!帰してくれないか?」

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