《MUMEI》
裕子の場合
アルバイト情報誌を買って、講義に向かった。


そういえば裕子と麻美も一緒だった。
僕は悠二と、彼女たちの後ろの列に座り、アルバイト情報誌を開いた。


すると裕子が後ろを向いて話しかけてきた。
「おはよう。そういえばこの講義とってたね」

「うん。裕子ちゃんはちゃんと出てた?」

「いや、出てない。けど今日出席取るって聞いたから」

出席を取るのは本当なのかあ、と思った。


しばらくして、彼女はまた話しかけてきた。
「バイト、探してるの?」

「そう。これなんかよくない?」
めずらしくも短期のウエイターの仕事だった。

「1ヵ月で自給900円? いいねえ。あたしもしたいんだけど…
一緒にしない?」

一瞬のうちに、
僕と裕子はおつきあいでもしている仲なのだろうか、
と錯覚を起こすくらいの空間が作り上げられた。

ただ一緒にアルバイトをしたいというだけで
好意を寄せているとは言い難いかもしれないけれど、
裕子の場合は「好きです」と言っているようなものだ、
と僕は思っている。

僕は困ってあやふやにした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫