《MUMEI》
始まり
 ヒラリーー。
 一匹の可憐な蝶……。
 赤い朱い紅色のアゲハ蝶。
 色んなものを見てきて、長い年月を生きてきた。

 ヒラリーー。
 女の前を軽やかに羽を動かし過ぎ去ろうとする。
 それはまるでヒトと言うには抵抗のある、異形の存在。
 虐待を受け、孤独に生き、セックスと
薬物に溺れた価値のないモノ。
 
 イカレた女……。

 その前をヒラヒラリ、蝶は舞う。

 それを見た女は恐怖に顔のようなものを歪ませ、手に香り付けのスプレーのようなモノを取る。

 蝶は死んだ。
 赤い朱い影をおとし。
 紅アゲハと恐れられたアノ蝶は模様していたその殻を脱ぎ捨て、女の胎内に遊びで造られた子供の中に溶け込む。

"絶対に許さない
 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す"

「ヒィッ!?」

"呪ってやる"

 脳内に直接響くようなその声に、女は気絶すると同時に子を産んだ。近くを通った人が助けを呼び、死んだと思われた子供と共に、母になった女も目を覚ました。

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