《MUMEI》
アール
アールが待つ部屋は、真ん中の分厚いガラスを対称に、ガラスの前に長机、そして椅子が一つ。違うのはこちら側のドアの近くにだけ、小さな机と椅子があるだけ、といった至ってシンプルな作りの部屋になっていた。


アールは既にガラスの向こう側の椅子に座っていた。


(それより、もうここまで来たんだからアールという呼び方は止めよう)

アールというのは掃除機を使った例の映画のタイトルからきている。
私と山本が彼のことをそう呼んでいるだけだ。

本名、高科守(たかしな まもる)、24歳、家電製品の開発の仕事に就いていた。
しかし掃除機を手掛けたことはない。


見た目は……髪の毛を短く切っており、がっちりした体つきをしている。



高科は私達が入って来てもずっと下を向いたままだ。

私は入口の近くの机の上に資料とノートを置き、山本と高科の前までいった。

やっと高科は顔を上げた。


「はじめまして、高科さん。心理学会の山本と言います。こっちにいるのが三倉です」

私は頭を下げた。

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