《MUMEI》
違和感
「早速で申し訳ないんだけど始めさせてもらいますね。
それよりこの部屋暑くありません?少し涼しくさせてもらいますね」

こちらに目配せしてきた。
−−涼しくしろってことか。
しばらくは山本に合わせて様子を見よう。山本が私に何を望んでいるのか分かるまではそうする他ない。

私は部屋を涼しくする為にスイッチを入れた。

上からミストが降り注ぎ、辺りを霧で覆っていく。こんな殺風景な部屋でも、誰も踏み入れない山奥の泉で、心地良い涼しい風に心まで洗われるような、そんな気にさせられる。


すぐに霧ははれてゆき、元の殺風景な部屋に戻った。


「初めてこれを見た時は驚きませんでした?霧が降ってくるんですよ。私は物が濡れてしまうんじゃないかって思いましたけど、そんなことにはならないみたいですね」


−−私は山本の違和感にすぐ気がついた。
山本は仕事モードにまだ入っていない。

私達には゛表゛と゛裏゛がある。
仕事モードを表とするなら、普段のふざけあっているのが裏にあたる。

仕事中に仕事モードになっていないのが異様であった。



「生まれた時からあったので不思議に思ったことはありません」

高科が初めて喋った。太くてしっかりしたシブイ声だった。
やはり高科は今までがそうであったように、どんな質問に対しても答を返してくるようだ。

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