《MUMEI》

例年より早い梅雨明けで、今は夏真っ盛り。

「暑い」

「長袖だからだろ」

「だって、日焼けしたくないもん」

「お前、雪みたいに白いじゃん」

「なっ…そこまで白くないし」

「夏は小麦色の肌にビキ…」

そこで言葉が止まったのは言うまでもない。

あたしが帽子を投げつけて顔にヒットしたからだ。

「いってぇな、ひでぇヤツ」

「どうせ、“命も着ればいいのに、スタイル良くないけど”でしょ」

「おっ、よく分かったねぇ〜」

「302号室で言われたことありますからぁ〜」

302号室…あたしたちが過ごした、あの病室。

そんな言い合いが楽しかった。

夏は、まだまだこれから。

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