《MUMEI》 プロローグ俺はいわゆる“ボンボン”だ。 ある程度の礼儀作法なら周りの誰にも引けを取らない自信がある。 ピアノや書道もたしなんでいたしスポーツも一通りできる。 職業柄、勉強もそれなりに出来る事に加えて爽やかな顔立ちから「プリンス」と言われた。 そのような扱いで目立つのは好きではないが、悪い気がしないのも事実だ。 俺が歩けば黄色い声が飛び交い、俺が笑いかければ顔を赤らめて伏せる....という時代というのも風のごとく去り、あれから五年。 俺は32歳になった。 俺が歩けば挨拶されるかされないかの瀬戸際で、俺が笑いかければ「何に笑ってんのw?」の一言で蹴り飛ばされる。 外が急に寒くなったようだ。 恐るべき女子高。 確かに最近中年太りらしき症状が気になり始めた。 更に担任にもなるとやはり煙たがられる。 五年も勤めていると新任の先生も入ってきて、若い先生に生徒は夢中。 別にいいさ。目立つのは好きじゃないのだから。 そう自分に言い聞かせた。 それに事実悲しくもない。 何故なら世の中には物好きというものがいるからだ。 生徒の事を考えるといの一番に彼女が脳内を駆け巡る。 そうだな、彼女を一言で表すなら 『雑草』…ではないだろうか。 いやたくましい。 驚くほど図太い。 俺の穏やかな精神をことごとくかき乱し、背中に語りかけては「無視すんなバ―――カ!」と吐き捨て、駆けていく。 無視ではないんだが、少女よ察してくれ。 俺は教師なんだ。男ではない。 これはいわゆる、俺と彼女の我慢比べだ。 二人とも卒業まで現状を保てるか、 さぁどうだろうな。俺は恋愛慣れしていないから。 次へ |
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