《MUMEI》

頬をペチペチ叩かれて気付けされた。

「メガネ君?……ああ、よかった起きてた。」

ぼんやりとしている間に先輩は俺の汚れた体をウェットティッシュで拭いて、服を着せてくれた。
入念に窓も開けて空気も入れ替えている。


「ごめんなさい、全部先輩にさせてしまって……」

「違う違う。二人でしたんだよ、気持ち良かったよね?
今日はメガネ君の家だから我慢するけど。また……しようか。」

額を密着して囁かれるとすぐまた、先輩の俺に擦り付けて達く顔を思い出してゾクゾクした。

「そ、そうだ……布団敷きますね。」

見惚れている場合でなかった。


「一緒にメガネ君のベッドで寝たいな。」

シングルベッドは二人だとみっちりして寝にくいと思うのだが、先輩は気にしないみたいだ。
兄ちゃんと二人で寝ると、いつも兄ちゃんの部屋で兄ちゃんのベッドで寝ていたからこうして自分のベッドに誰かが寝るのは久しぶりで……それがしかも先輩だなんて夢のようだ。


「メガネ君の家ってのびのび出来るね、お母様も楽しい人だし……ね?」

ベッドでゴロゴロと寝転ぶ先輩は、中学当時の無邪気さが残っていて可愛らしい。

「先輩……、」

こんなにカッコイイ顔なのに可愛いなんて狡い。
しかも俺と両想いで少し……いや、かなりえっちぃ。
じっと見詰めると滲み出る色香の凄みで目を逸らしてしまう。


「そうだ。噛んだとこ、歯形になっていたでしょ……。メガネ君ってポケーッとしてるからちゃんと俺の印付けておかないと忘れちゃうよね……、そうそう。なんか筋肉落ちたのかむっちりしてて噛んでる時に気持ち良かったんだけど、どうだった?」

「えっ……痛かったですよ、でも気持ち良くなるように努力します!」

言ってみたものの、あんなに痛かったのに、どうすればいいんだ。


「そうか……。じゃあこれくらい?」

ベッドの上に顎を乗せて寄り掛かっていたところに不意をつかれ唇を奪われた。
下唇を甘噛みしてくる。


「ウワアア!」

つい、絶叫してしまう。慌てて口を押さえた。




「ユキ五月蝿いよ!」

母さんが扉を開けるので慌てて先輩と距離を取った。

「すみません、はしゃいじゃいました。」

「神部君はいいのよ〜」

母さんの前で平静を保てる先輩の余裕がたまに怖い……。

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