《MUMEI》
「謎」…内容、正体がはっきりと分からない様
中学三年生には新聞制作の課題を残して教室を去った。ひどいブーイングを受けた。

まだまだ暑い日々は続く。明日から夏休みだ。



夏休みを家庭に費やせる教師もいれば、俺のように体育会系クラブの顧問としてほぼ毎日学校に来なくてはならない教師もいる。

独り身であるから暇を持て余さなくて良いのだが、正直しんどい。

しかし顧問ごときがバテていては示しがつかない。一番辛いのは生徒なのだから。

テニス部の隣で活動しているソングリーダー部という、ポンポンを持って踊る部活がある。
全国レベルなだけあって、休みがあるのか心配になるくらい毎日練習している。
上下関係も厳しく、後輩は毎日泣いていた。
おそらく、いや確実に一番辛い部活だ。

それに比べて楽な部活といえば、漫画部と演劇部だろうか。
漫画部は文化祭前にしか活動しないし、演劇部はもはや活動しているのかさえ不明だ。

あぁ、そういえば高橋は演劇部だった気がする。

高橋と言えば、最近授業の度に話しかけてくるようになった。
ニコニコしながら「先生かっこいいですね」とか言うときもあれば、「先生くらい太ってた方がいいですよね」とか嘲笑いながら言ってくるときもある。
高橋、お前は情緒不安定なのか?


職員室に帰り、その事を隣の国語教師に話した。
「高橋って特定の先生にはそうですよ。得意な教科の教師には結構話しかけてるみたいですけど、生物の山本先生とは特に仲いいですね。」
国語も得意なんで、僕も話しかけられます。と言って笑った。

その場では納得したが、デスクに向き直って仕事をしている最中よくよく考えると高橋の公民の成績は
中間47点
期末41点。
当然100点満点のテストで、お世辞にも良い成績とは言えない。

なのに何故話しかけてくるのだろう。

悶々と考えているとき、山本先生の笑い声が聞こえた。
滅多に笑うような人ではないので驚き、横目で覗いたら高橋と話しているようだ。
高橋も俺には見せない笑顔で話している。
気が合うんだな。
高橋が帰り際に俺と隣の教師に手を振って行った。


謎だ。
俺に話しかける理由はどこにも見あたらない。

不思議だなあ、と思いつつ書類に手をつけた。

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