《MUMEI》

歯ブラシを購入する為に二人で近くのコンビニにぶらりとした。
俺はまだよろけていて、ふらりとしている。たまに先輩が腕を、人目につかないようにこっそり貸してくれた。

「場数踏んでいるせいか、先輩は慣れてますよね……。俺、ちょっとさっきのには緊張しました。」

柔らかい歯ブラシを探しながら自分の不甲斐無さに沈む。
母さんに不信がられたかもしれない。
やはり恋人が出来て、それが憧れ続けていた超絶美青年だとは親に言い難いものがある。


「俺はあのままバレてもよかったし。」

「えっ……」

あまりにびっくりして歯ブラシのケースを潰してしまう。

「あーあ潰した、これ買わなきゃ……。
今日メガネ君のお母様に会って家でメガネ君とじゃれながら過ごしてみて、いずれは恋人同士だと言わなきゃとは思ったなあ。なんか無性にメガネ君と家庭を持ちたい……。」

今のって、まるで告白みたいじゃないか。

「せ、先輩っていつも俺をびっくりさせますよね……心臓が幾つあっても足りないです……!」

まともに顔を見れないので、言い逃げしてコンビニの外に出てしまう。


「メガネくーん、飲み物買ってきたよー。出ておいでー。」

ポストの影に隠れて待っていると先輩がタピオカジュースを片手に振って出て来た。以前、先輩に案内された店で頼んだタピオカジュースに感動したことを覚えてくれていたのか。

「来た来た。よーしよしよしゃ。」

走って先輩の真ん前に立って撫でて貰う。

「いっぱい買いました?」

歯ブラシの他にも袋に物が詰まっている。

「んー、歯ブラシでしょ。ノート。珈琲。緑の野菜ジュース……」

先輩がガサガサと袋の中を広げて買った物を見せてくれた。

「グレープフルーツガム。ゴム。電池。」

「……ッ!」

さりげない、ゴムの箱の通過に混乱して声も出ない。

「来週に使うかも。」

嬉しそうにゴムの箱を見せてくれた。

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