《MUMEI》
一件落着?
俺に向かって拳を振り上げて来た。






     ガッ






「キャー、七生!」



かえでが悲鳴をあげた。
俺を庇って七生が殴られたのである。ボディに入っている、痛そうだ。

相手も気が付いたらしくて慌てている。俺達がかえでを泣かせたと勘違いしていたようだ。


かえでと彼氏は口論を始めるし、七生は踞って震えてるしでもうどうすりゃいいのか……。



「腹筋の無い二郎なら折れてただろうな」
七生が耳打ちした。
どぉせ俺は貧弱ですよ!
万年文化系ですよ!

わざと殴られた場所を突いた。

ちょっと堪えたみたいで、眉間に皺が寄っている。
ざまあみろ。


……馬鹿な奴。庇って怪我するなんて。

また傷が増える。
七生は小さい頃から落ち着き無い生傷が絶えない子供だった。

七生にくっついてかえでも走り回り俺と乙矢は彼らを必死に追いかける。
それはかえでが居なくなってからも同じだった。

傷だらけになって、大人達に怒られても楽しそうにはしゃぐ彼がどんなに眩しかったか、知らないだろう。

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