《MUMEI》
――俺なんか今だにユニクローゼだ。
下手すりゃ母親が買ってきたサンキしまむらだ…。
裕斗は俺の髪に手を伸ばしてきた。
「はは、少し手入れしなよ、寝癖酷い」
「…ふて寝してたんだよ、あーもうこれから俺んち来いよ」
俺は髪に触れる裕斗の手首を掴み、両手でギュッと握りしめた。
「ゴメン…、今日は
疲れちゃった」
困った様に笑う裕斗。
今までどんな事が有ったって断った事が無いのに。
「そんなにきつかったの?オーディション」
「…うん… 疲れちゃった………」
裕斗は俺に腕を掴まれたまま前にズルズルと崩れ、頬をテーブルに付けた。
「冷たい……」
裕斗は眼を瞑っている。
俺は片手で手を握りながら、裕斗の髪を撫でた。
「しょうがないなあ、今日は勘弁してやるか」
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