《MUMEI》

夕食の片付けをしていると俺の携帯に電話がかかってきた。
発信者は…鴒か。
「お姉ちゃんでしょ?
さっさと出なよ
あたしが片付けとくからさ」
「ん、ありがとう」
「でもいちゃつくなら別の部屋でやってね」
「ちげーよ」

「もしもし?」
『…もしもし、由?』
「案外早く掛けて来たな」
『だって…会えなくて寂しかったから…』
「…普段、ずっと一緒にいるからだろ」
『………ダメ?』
「いや、ダメじゃないけど…」
そんな泣きそうな声出すなよ…。
「ほら、勘違いされたりするしさ
好きな人とか出来たら困るだろ?」
『由とだったら…僕は困らない』
俺とだったら?
「まぁ、別に俺も好きな人がいるわけでもないし、
鴒みたいな可愛い娘ならむしろ歓迎だけどな」
わりと本心である。
『…やめてよ、照れるから』
狼狽える鴒というのも珍しい。
その後、他愛も無いことを話していると
「お兄ちゃん、あたしお風呂終わったから
早めに入りなよ」
と翼が声を掛けて来た。
「すまん
そろそろ風呂入るから切るわ」
『ん…わかった
明日また掛けるね
…っと、切る前に翼ちゃんに変わってくれるかな?』
「オッケー
…翼、鴒が話したいってさ」
「はいはい…
もしもし、お姉ちゃん?
うん、予定通りだよ…」
電話は翼に任せて俺は風呂に入るか。

風呂から上がるとリビングで翼が寝ていた。
翼の前にはまだ暖かいココアがあり、その対面の俺の定位置にもココアが置いてある。
俺のために用意してくれたのか?
「…ありがとな」
風邪を引かないように上衣を掛けてやる。
…せっかくだから飲むことにしよう。
対面から翼を眺めながらココアを飲む。
黙ってりゃコイツもそれなりに整った顔してるんだが…。
そんなことを考えていると強い眠気が襲って来た。
まぁいいか…寝てしまおう…。

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