《MUMEI》

 深く、一直線に落ちていく。
 重力に引かれて落下する紅い果実を、夜は待っている。
 何かに焦がれ落ちていくけれど、望む答えが返ってくることはない。
 広げた両腕で抱いた果実を、夜は決して放さないよう包み込む。


「楽園はどこにあるの」

 紅い果実が問うたのか。

「そんなもの…‥」

 夜が短く哄ったのか。

「そんなもの?」
「どこにもない」


 奈辺の底は深い々々、海のような闇、紺碧の闇。

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